繰上げ受給の危険性

1.老齢基礎年金の年金額

老齢基礎年金の年金額

老齢基礎年金の支給開始年齢は、原則として65歳ですが、受給資格期間を満たしている人は、支給開始年齢を60歳以上65歳未満に繰り上げることや、66歳以下に繰り下げることができます。
 老齢基礎年金の年金額は、平成30年度価格で779,300円(月額64,941円)です。これは20歳から60歳までの40年(480ヶ月)分の保険料を全て納めた場合の満額であって、合算対象期間や未納期間がある場合には、その月数分が減額されます。

年金額の計算

 保険料全額免除期間は「保険料全額免除月数×2分の1」、保険料半額免除期間は「保険料半額免除月数×4分の3」、平成18年7月から適用されている保険料4分の3免除期間は「保険料4分の3免除月数×8分の5」、保険料4分の1免除期間は「保険料4分の1免除月数×8分の7」で計算します。
 学生納付特例制度及び納付猶予制度の期間は、追納しない場合には年金額に反映されません。

2.老齢基礎年金の支給の繰上げ

昭和16年4月2日以降に生まれた人について
老齢基礎年金は、原則として65歳から受けることができますが、希望すれば60歳から65歳になるまでの間でも繰上げて受けることができます。しかし、繰上げ支給の請求をした時点(月単位)に応じて年金が減額され、その減額率は一生変わりません

■ 減額率=0.5%×繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数
「減額率=0.5%×繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数」

※1 「経過的加算相当額」と「経過的加算」は同額で、「定額部分」から基礎年金相当部分(厚生年金保険の被保険者期間にかかる老齢基礎年金の年金額)を差し引いた額となります。
※2 全部繰上げの老齢基礎年金の支給額は次の式で計算されます。

全部繰上げの老齢基礎年金=繰上げ前の老齢基礎年金×(1-0.005×繰上げ請求額から65歳に達する日の前月までの月数)

全部繰上げを請求される際の注意事項

  1. 国民年金に任意加入中の人は繰上げ請求できません。また、繰上げ請求後に任意加入することはできず、保険料を追納することもできなくなります。
  2. 受給権は請求書が受理された日に発生し、年金は受給権が発生した月の翌月分から支給されます。受給権発生後に繰上げ請求を取り消したり、変更したりすることはできません。
  3. 老齢基礎年金を全部繰上げて請求する場合、特別支給の老齢厚生 (退職共済) 年金のうち基礎年金相当額の支給が停止されます。報酬比例部分は支給されます。
  4. 老齢基礎年金を繰上げて請求した後は、事後重症などによる障害基礎年金を請求することができなくなります。
  5. 老齢基礎年金を繰上げて請求した後は、寡婦年金は支給されません。また、既に寡婦年金を受給されている人については、寡婦年金の権利がなくなります。
  6. 老齢基礎年金を繰上げて請求した場合、65歳になるまで遺族厚生年金・遺族共済年金を併給できません。
  7. 老齢基礎年金を繰上げて請求すると、次の減額率に応じて生涯減額されます。このため、受給期間の長短により、繰上げ請求しない場合よりも受給総額が減少する場合があります。
    「減額率=0.5%×繰上げ請求月から65歳になる月の前月までの月数」【繰上げ減額率早見表】請求時の年齢60歳61歳62歳63歳64歳0カ月30.024.018.012.06.01カ月29.523.517.511.55.52カ月29.023.017.011.05.03カ月28.522.516.510.54.54カ月28.022.016.010.04.05カ月27.521.515.59.53.56カ月27.021.015.09.03.07カ月26.520.514.58.52.58カ月26.020.014.08.02.09カ月25.519.513.57.51.510カ月25.019.013.07.01.011カ月24.518.512.56.50.5
  8. 老齢基礎年金を繰上げて請求した場合、国民年金保険料の後納制度(平成27年10月1日から平成30年9月30日までの期間)による保険料納付ができません。
  9. 特例老齢農林年金の受給権発生に伴い、過去に農林共済組合から支給を受けた退職一時金の返還義務が発生した年金受給権者が、特例老齢農林年金の受給権発生前に老齢基礎年金を繰上げ請求した場合には、追加されたみなし厚生年金期間は、繰上げした老齢基礎年金の額の算定の基礎とはなりません。
    いつ死ぬかわからないから、年金が破綻するかもしれないからと、老齢基礎年金の繰上げ請求をする人がいますが、繰上げ請求には様々なリスクが生じます。生活困窮により、どうしても早くに年金が必要な場合や、病気により平均寿命まで生きられない可能性が高い場合など、特別な理由がある場合はやむを得ませんが、そうでなければ、容易な繰上げ請求は控える方が賢明です。

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