国民年金と厚生年金の違い

1.国民年金と厚生年金

国民年金と厚生年金

国民年金は基礎年金と呼ばれ、日本に住む人の最も基本的な保障、最低ベースの保障となります。いわゆる「1階建ての年金部分」と呼ばれる年金ですべての基礎といえます。厚生年金は形としては「国民年金を内包する追加の年金」となります。厚生年金に加入している方は「厚生年金保険料」を支払っていますが、この保険料には国民年金保険料が含まれており、いわゆる「2階建て部分」です。さらに企業年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)などが「3階建て部分」となります。図にすると下記のようになります。

2.国民年金の保険料

第1号被保険者の保険料

第1号被保険者の平成30年度の保険料は、定額で月額16,490円です。原則として被保険者本人に納付義務がありますが、本人に収入がないときは、世帯主又は配偶者が連帯して納付する義務を負います。

第2号被保険者・第3号被保険者の保険料

第2号被保険者と第3号被保険者の保険料は、厚生年金保険の実施者たる政府又は実施機関たる共済組合等が、加入者と被扶養配偶者の数に応じて、徴収した保険料の中から基礎年金の給付費用をまとめて国民年金制度へ拠出します(基礎年金拠出金)。そのため、個別に国民年金の保険料を納める必要はありません。第2号被保険者の保険料は、被保険者と事業主がそれぞれ折半で負担します。なお、第3号被保険者の基礎年金費用は、国庫負担と政府及び実施機関である共済組合等からの拠出金によって賄われています。
厚生年金保険料は月収が20万円くらいだと実質負担額でいえば、国民年金とはさほど差がありません。収入が大きくなるほど年金保険料は増加しますが、厚生年金は実際に給付を受けるときも「報酬比例」となっており、これまでに支払った保険料が高い人ほど、実際に受け取れる年金額なども大きくなります。
 また、第2号被保険者の配偶者(年収130万円以下)は第3号被保険者となり、その期間は、保険料負担なく国民年金納付済期間として扱われます。第1号被保険者には扶養という概念はなく、第1号被保険者の配偶者は第1号被保険者です。

3.老齢年金

老齢年金というのは老後に受け取れる年金です。老齢年金は老齢基礎年金(国民年金部分)を基本として、厚生年金加入者は報酬比例部分を受け取るという形になります。
実際にどのくらいの差が出るのか?という点は現役時代の報酬額などによっても変わってきますので一概には言えませんが、厚生労働省が統計として出している数字(平成27年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況)があるので比較してみましょう。

国民年金のみを受け取っている人の年金額
(月額)50,927円
厚生年金受給者の平均受給年金額
(月額)145,305円

4.障害年金

障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。
障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やケガで初めて医師の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。なお、障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害手当金(一時金)を受け取ることができる制度があります。

また、障害年金を受け取るには、年金の納付状況などの条件が設けられています。

第2号被保険者・第3号被保険者の保険料

厚生年金に加入していれば、過去の報酬額(収めた厚生年金保険料)や配偶者の有無などによって上乗せが行われる他、国民年金だけだとでない、「障害等級3級」の場合でも年金の給付がなされます。

5.遺族年金

遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった人が、亡くなったときに、その人によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。
被保険者であった人については、受給資格期間が25年以上あることが必要です。
遺族年金には、「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」があり、亡くなった人の年金の納付状況などによって、いずれかまたは両方の年金が支給されます。遺族年金を受け取るには、亡くなった人の年金の納付状況・遺族年金を受け取る人の年齢・優先順位などの条件が設けられています。

遺族年金

国民年金(遺族基礎年金)の場合、遺族に18歳未満の子がいる場合に支給されます。あくまでも「子」に対する支給となりますので、子がいない夫婦の場合は給付されません。また、子がいた場合でも18歳以上になった場合は打ち切りとなります。
一方で厚生年金(遺族厚生年金)は手厚いです。遺族基礎年金に加えて、死亡した世帯主のこれまでの厚生年金保険料に応じた年金額、子が18歳を過ぎても、年齢などの条件を満たしていれば「中高年寡婦加算」などの形で遺族年金を受け取ることができ、その年金は遺された方が老齢基礎年金を受け取れるようになるまで続きます。

全6.個人事業主は法人成りの検討を

生計中心者にもしものことがあった時、遺族厚生年金か遺族基礎年金かで受給額に大きな差が出ます。遺族厚生年金の受給要件は以下のとおりです。
【短期要件】

  • 1.厚生年金保険の被保険者が死亡したとき
  • 2.厚生年金保険の被保険者であった期間中(在職中)に初診日のある傷病により、初診日から5年以内に死亡したとき
  • 3.障害等級1級又は2級の障害厚生年金の受給権者が死亡したとき

【長期要件】

  • 4.受給資格期間が原則25年以上である老齢厚生年金の受給権者又は老齢厚生年金の受給資格期間が原則25年以上ある人が死亡したとき

つまり、会社員をしていた人が独立し、個人事業主になった場合、受給資格期間が25年未満であれば、もしもの時に遺族厚生年金は支給されません。過去に納めていた厚生年金は無駄になります。

法人成りを検討して厚生年金に加入されるか、残された家族のための遺族年金(生命保険)、万が一病気や怪我で働けなくなった時の保険(医療保険・収入保障保険)など自助努力として自分で備えるか、よく考えておく必要があります。

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