仕事と介護を両立させるということ②~介護離職ゼロの実現~
前回は、介護離職が今後増加する原因についてお伝えしました。
では、仕事と介護を両立させるには、企業は、就労者はどうすればいいのでしょうか。
企業の両立支援の課題を立てるうえで大切なのは、介護世代の人々が介護についてどう思っているかを知ることです。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」によると、仕事と介護の両立について、40代・50代の正社員に尋ねてみたところ、「非常に不安を感じている」「不安を感じている」人は、男性で72.1%、女性で77.2%という結果でした。働き盛り世代のほとんどが不安を感じているのです。
さらに、介護を機とした離職者では、男女ともに8割強が「非常に不安を感じていた」「不安を感じていた」と回答しています。
不安を感じている人の具体的な不安内容をみると、
1.自分の仕事を代わってくれる人がいないこと
2.介護休業制度等の両立支援制度を利用すると収入が減ること
3.介護休業制度等の両立支援制度がないこと
4.介護サービスや施設の利用方法がわからないこと
5.どのように両立支援制度と介護サービスを組み合わせれば良いかわからないこと
という結果が出ています。
このことから、
・両立支援制度がないことで離職者が増えてしまっている
・あっても両立支援制度が上手に活用されていない
・現時点では企業の両立支援制度モデルがないため、自分事のように考えておらず効果的な運用がされていない
ことが考えられます。
前回の投稿で記載しましたが、介護離職をした人たちは、本当は「働き続けたかった」のです。
ですが、「自分の仕事を代わってくれる人がいない」ことで介護と仕事の板挟みに合い、仕方なく離職してしまうという人が多いと考えられます。
残念ながら、現時点での企業は、両立支援に関して消極的であると言えます。
「介護を抱える従業員がいるかどうかの実態把握状況」から見ると「特に把握していない」が46.4%と、約半数なのです。
企業が両立支援について他人事と考えているうちは、体制が整えられず、就労者に周知もされません。
ですから、就労者は介護に直面しても、企業に相談もできないままに退職を余儀なくされるという悪循環に陥っているのです。
企業側は次の課題に取り組み、両立支援体制を早急に整備しなければなりません。
- 就労者の介護に対するニーズの把握
- 介護を抱えるまたは介護が予想される就労者の実態把握
- 業務内容のシェア、仕事の分担などができるような職場づくり
- 両立支援制度の確立と周知
両立支援体制を整えておけば、就労者が介護に直面しても安心して働き続けることができます。
また、就労者が介護休業などを取得した場合に、国から助成金を受けることも可能です。
介護はプロの事業者にお任せし、家族は介護休業などを利用して、介護の環境を整え、心の繋がりを大切にすることが必要なのです。
また、行政手続きを行うことで、受けられる軽減制度があっても、それを知らず、誰にも教えてもらえず、余分な費用を払っている人が非常に多いことも問題です。
そのためには、介護保険制度のについて、企業も従業員も理解していくことが早急に求められます。